知っている人だけが得をする!所得控除と税額控除の基本とは!?
そろそろ2024年も終わりに近づき、確定申告や年末調整の準備を意識し始める方も増えてきたのではないでしょうか。近年、物価高やインボイス制度導入に加え、住宅ローン減税(住宅ローン控除)の見直しによる実質的な増税が続いており、少しでも税金を取り戻す方法を考える方が多いことでしょう。そんな中、ぜひチェックしておきたいのが「所得控除」と「税額控除」です。どちらも税金を減らす仕組みではありますが、著者への相談を通しても、両者の違いを正確に理解している方が少ない印象を受けます。
本稿では、この2つの控除について、初心者にも分かりやすく解説し、具体的な事例を交えながらその違いと活用法をご説明します。確定申告や年末調整の前に、ぜひ一度ご自身の理解を確認してみてください!
所得控除と税額控除の違い
まず、所得控除と税額控除の違いを整理しましょう。
所得控除は、課税対象となる所得を減らす制度です。国税庁によれば、「納税者の生活状況や扶養親族など個人的な事情を加味して税負担を調整するもの」とされています。所得控除には、代表的なものとして「医療費控除」「扶養控除」、人気の「ふるさと納税」による「寄付金控除」、さらにはiDeCo(イデコ)の掛金が対象となる「小規模企業共済等掛金控除」などがあります。
所得控除を適用することで、所得税や住民税の課税対象額が減少し、結果的に納税額が軽減されます。
一方で、税額控除は、既に算出された税額から直接控除する制度です。国税庁によれば、「課税所得金額に税率を掛けて算出された所得税額から一定の金額を控除するもの」とされています。税額控除の代表的なものには、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」や「配当控除」があります。
【参考】国税庁ホームページ 『タックスアンサーNo.1200 税額控除』
所得控除が「課税所得額を減らす」のに対して、税額控除は「最終的な税額を減らす」点が大きな違いです。
具体例を挙げると、年収400万円で課税所得が300万円の人がいるとします。この人が所得控除で50万円を適用すると、課税所得は250万円に減少し、その結果、所得税もその額に基づいて計算されます。仮に税率10%とすると、税額は25万円です。そして、税額控除はこの税額25万円そのものに対する控除です。たとえば税額控除で5万円が適用されると、最終的な税額は20万円になる、といった具合です。このように、所得控除は課税所得に、税額控除は最終的な税額に直接影響を与える仕組みとなっています。
所得控除と税額控除の有効活用について
税額控除はダイレクトに税額から差し引かれるため、節税効果はシンプルで分かりやすい特徴があります。しかし、現実には一般人が使いやすい税額控除の種類は限られており、前述した「住宅ローン控除」や「配当控除」くらいしか選択肢がありません。(関心のある方は、先ほどの国税庁ホームページをご参照ください)そのため、所得控除を上手に活用することが、確定申告や年末調整で税金を取り戻すカギとなります。たとえば、所得控除の一つである医療費控除について、「医療費が一定額を超えた場合に適用できる」ということは多くの方がご存じかもしれませんが、以下のような制度設計となっていることは意外と知られていません。
- ・本人だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も対象とできる
- ・医療費以外にも、「通院のための交通費」が控除対象になり、やむを得ない事情があればタクシー代も対象になる
- ・通常の医療費控除の代わりに、市販薬の購入に適用される「セルフメディケーション税制による特例控除」を選択することもできる
これらの情報を知らないまま確定申告や年末調整をしてしまったとしても、税務署が親切に教えてくれることはありませんので、手間を惜しまずに制度の詳細を理解し、自分に当てはまる控除をチェックすることが重要といえるでしょう。他にも、今からでも間に合う所得控除による節税方法としては、「ふるさと納税」や「iDeCo(イデコ)」も王道です。ふるさと納税は、返礼品を受け取りながら税金を減らせる制度で、寄付金控除として所得控除の対象となります。また、iDeCoは将来の年金の積み立てを行いながら所得控除を受けられる制度で、小規模企業共済等掛金控除として、やはり所得控除の対象となります。関心のある方は、是非今からでも検討してみるとよいでしょう。
いかがでしょうか。
日本の税制が非常に複雑であることは間違いありませんが、このように「知っている人だけが得をする」といった仕掛けが、実はそこかしこに転がっています。
今年の確定申告・年末調整まではまだ時間がありますので、これを良い機会と捉えて、所得控除や税額控除の制度を改めて確認してみるとよいでしょう。